「大学の学びはこんなにおもしろい!」

「現実の世界とコンピュータの世界とを融合させて、面白いことをしたい!」
デザイン学部 若林尚樹 教授

■新設されるデザイン学部で、先生がご担当される教育について教えてください。
東京工科大学のデザイン学部は、ひとことで言えば、純粋なデザインの分野を勉強できるところです。カリキュラムの特徴としては、「感性教育」という一番ベースになる部分と、コンピュータやデザイン分野の専門的な技術を学ぶ「スキル教育」という部分があります。その二つの領域を勉強したうえで、それぞれの専門分野に分かれて学んでいくという流れになります。その中で私が担当するのは、スキル教育になります。デザインのテクニックやコンピュータを使ったさまざまな手法について教えていきます。特に私の専門であるウェブデザインや、それを利用したインタラクションデザインの視点で、コンテンツ制作を中心に指導していくつもりです。

■ウェブデザイン、インタラクションデザインとは、どのようなものですか?
ウェブデザインとは、インターネット上でわかりやすく情報を伝えるとか、自分のしたいことを簡単に楽しくできるようにするためのデザインを考えることです。また、コンピュータの画面の中をどうデザインするかといったビジュアル的なことだけでなく、コンピュータとそれを使う人がどうやりとりするか、どう使うかという視点からビジュアルや映像分野、場合によってはプロダクト分野へのアプローチなどを考えていくことがインタラクションデザインです。例えば、月に関するさまざまな情報やコンテンツを総合的に扱った『月探査情報ステーション』というWebサイト内のコンテンツに「MoonKids」という月に関するさまざまな情報を提供する子ども向けのインタラクティブコンテンツがあります。

これは月に棲む架空のキャラクター「むーたん」を主人公に、学校で月に関する疑問を調べる宿題を出された「むーたん」が、自分の棲む街の旅行会社や天文台などいろいろなところに行って調べるというストーリーです。私と学生8人、そして宇宙科学を専門とする研究者とで共同制作しているもので、1年前から『月探査情報ステーション』で公開をしながら子供たちの反応を調べ、それをもとに改良を重ねています。 “月までの距離はどのくらいか”とか“月はどうして光っているのか”といった月に関する素朴な疑問を、旅行社や天文台などいろいろなところにいる人たちが、その場にちなんだ質問に答えるという形で情報を提供していきます。このようにコンテンツにおいて、人が何かをしたら何か反応がある、何かをすると何かが見えるといったコンピュータと人とのインタラクション、つまり“やりとり”について考えることが私の専門であり、研究テーマでもあるのです。


■デザイン学部では、どのような研究をしていきたいとお考えですか?
いろいろな知りたいこと、体験したいことを、コンピュータを使ってできるようにしたいと思っています。とはいえ、それはコンピュータの世界に閉じこもってしまうようなイメージではありません。コンピュータは、私たち人間が生きている現実の世界で面白い発見をしたり、面白いことをしたりすることのきっかけに過ぎませんからね。先ほどの「MoonKids」というコンテンツにしても、単にコンテンツ内で月に関する疑問の答えを得るだけでなく、その小さな疑問をきっかけにして、ユーザーの興味を月はもとより宇宙や科学にまで拡げていけるようなものにしたいと思っています。また、Webサイト『月探査情報ステーション』には、「MoonKids」の他にも月に関するさまざまな情報を扱っていて、子どもから大人まで多くの人が利用できるようになっています。その中には、研究者が制作したサッカーボール型の惑星や探査衛星などのペーパークラフト素材(展開図)を提供するページがあり、ユーザーは実際にペーパークラフトを作ることもできます。ですからWebサイトでいろいろな情報を調べたり、コンテンツを楽しんだり、それをきっかけに夜空を眺めたり、自分の手でペーパークラフトを作ってみたりと、コンピュータ内にとどまらず、多種多様な楽しみ方や体験ができるわけです。そんなふうに、現実の世界とコンピュータの世界とをうまく融合させた“場”を、創っていきたいと思っています。

■先生がデジタルデザインの分野に進まれたきっかけを教えてください。
実家が金沢漆器や輪島塗といった伝統工芸を生業にしていたので、私は両親から美術系の大学で工芸を学ぶようにと言われていて。まずはそれに反発するところから、はじまりました(笑)。というのも私は自動車のデザインが大好きで、そのデザインをしたいと思っていたからです。そこでなんとか両親を説得して、美術系大学のプロダクトデザインの学科に入りました。それから4年間、プロダクトデザインを学び、大学院へ進学したのですが、結局、今ひとつ何をしたいかが決まらなくて。そんなときに、当時、日本に入ってきたばかりのコンピュータクラフィックス(以下CG)を目にする機会があり、そのすごさに感銘を受けたのです。もちろん今からすれば、技術的にレベルの低いものでしたが、当時の私にとっては、ものすごい驚きを与えてくれるものでした。それで「ぜひこれを勉強したい!」と思い、通産省製品科学研究所というところへ押しかけていき、研修生として学ばせてもらったのです。そこにはアメリカでCGの勉強をして帰ってきたばかりの研究員がいましたからね。その後、別の大学の大学院に入り直し、そこからずっとCGに携わってきました。企業に就職後もプロダクト分野でのCGを手がけてきました。やがて化粧品メーカーの宣伝部に入り、パッケージデザインをCGで表現したりシミュレーションしたり、デザイナーが自分でCGを使えるようにするためのプログラム開発なども手がけるようになりました。そこでデザイナーがどうしたら自分の思い通りの形をコンピュータ上でつくれるのかということを考えるようになり、インタラクション、つまりユーザーとコンピュータとのやりとりに興味を持っていったという経緯です。

■デザイン学部では、どのような学生を輩出していきたいとお考えですか?
いろいろなことにすごく興味を持っていて、柔軟にその興味を発揮できる人。そして、友だちや知り合いがたくさんいる人になってほしいと願っています。デザイン分野で仕事をするには、どれだけ知り合いや友だちがいるかということも重要です。自分の専門外でも、できる人を知っていれば、その人と一緒に仕事ができます。知り合いを集めて、自分ひとりでは成しえないようなことに、挑戦できる可能性もあります。だから学生の間に、友だちや知り合いをたくさんつくってほしい。そして、いろいろな興味の種を仕入れるような4年間にしてほしいと思っています。
また、キャンパスのある蒲田は、渋谷や上野や六本木といった面白いスポットに、30〜40分ほどで行ける場所です。ということは、授業の合間や学校帰りに美術館などに立ち寄ることもできるんですよね。そこが蒲田という都心にある大学のメリットだと思うので、大学にいる間に、ぜひいろいろな興味を見つけてほしいです。学生が「これからちょっとギャラリーに行ってきます」と出かけて行くというようなことが日常的になれば、すごくいいなと思っています。
[2009年1月取材]

■デザイン学部
■月探査情報ステーション(PCサイト)
http://moon.jaxa.jp/

・次回は3月12日に配信予定です。

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