「大学の学びはこんなにおもしろい!」

「画像処理の技術を応用して、コンテンツの世界で面白いことをしよう!」
メディア学部 宮岡 伸一郎 教授

■先生の研究室では、どのような研究が行われているのでしょうか?
「イメージメディアプロジェクト」と名づけて、画像関係の研究を行っています。古い言い方をすれば「画像処理」ですが、もっと膨らみを持たせて「イメージメディア」と表現しているのです。というのも画像処理は、これまで医療や一般産業分野で研究されてきました。また、画像の中に映っているものを認識する文字認識といったコンピュータビジョン分野の技術もあります。当研究室ではそれらの技術を、一般的な産業分野でなく、コンテンツやヒューマンインターフェースというフィールドで応用する研究に取り組んでいます。例えば、「モーションキャプチャ」の研究。大規模なモーションキャプチャの装置ではなく、安価なウェブカメラを使って、人間の体の動きや顔の表情の変化を取り込んで認識し、アバター(※自分の分身となるキャラクタ)をリアルタイムで動かすことに成功しています。この技術はまだ本格的な応用に至っていませんが、チャットやゲームなどのコミュニケーションツールに応用しようと研究を進めています。また、私の研究室の面白いところは、基本技術の研究を固めていくと、学生が思いもよらないことを提案してくるところにあります。去年の卒業研究生には、この「モーションキャプチャ」を利用して、アクションペインティングをしたいという学生がいました。アクションペインティングとは、壁にペンキをかけたり、筆を振って絵の具を叩きつけたりして絵を描く方法です。モーションキャプチャによるアクションペインティングは、マーカーを手に持ち、それを振るとウェブカメラがマーカーをキャプチャし、大きなスクリーンに写し出す仕組みになっています。なかなかユニークな研究でしょう(笑)。

■学生の発想が、研究をより面白い方向に発展させていくのですね。
そうです。例えば、メディアテクノロジーセンターで取り組んでいるレ゙ーザーミラースキャナを使った文部科学省関連のプロジェクト研究「3Dキャンパスマップ」。これも学生の頑張りが大きな成果に繋がりました。レ゙ーザーミラースキャナを使うと、数百メートル範囲の建物や空間を計測でき、3次元の点情報を数分間でキャッチできます。その点情報をCGのモデルに使ったり、点情報に実写画像の色をそのままつけたりということを行っていました。そこからさらに発展させて、今度は3次元の点描画がつくれたら面白いのではないかと考えていて。そんなときにちょうど卒業研究で、実写の画像を点描に変えるフィルターをつくりたいという学生が現れたのです。その学生は、1年をかけて点描画で有名な画家ジョルジュ・スーラが、どういう手順、アルゴリズムで点描画を描いているかを調査し、実装してくれました。この研究は、当研究室の1期生であり、現在はメディアテクノロジーセンターの研究員である渡辺賢悟くんが引き継いで進め、今年の情報処理学会で「3Dスーラ」というタイトルで発表し大会奨励賞を受賞しています。
また、画像レタッチの分野でも面白い卒業研究が出てきて、今年の情報処理学会で学生奨励賞を受賞しています。「キャラクタデザインのための画像合成手法の研究」という内容を4年生の卒研生が手がけて、学会発表したのです。これは例えば何かのキャラクタをつくるとき、企画者が自分で絵を描くわけにはいかないので、「こんな感じにしてほしい」と細部をデザイナーに伝えますよね。でも、うまく伝わらないことが多いです。そこで既存のキャラクタを使って、鼻はこのキャラクタ、目はこのキャラクタというように、イメージをモックアップできるようなものが欲しいとコンテンツ系の研究をしている先生方から要望があって。それならばと画像合成の技術を用い、既存キャラクタのパーツ合成をシームレスに行うという技術の開発に取り組んだのです。ちょっと専門的な話になりますが、これには“Poisson(ポアソン)方程式”という電磁気や流体の物理法則を表す式を使っています。ですからもともとは画像の世界とはまったく関係ない技術なのです。ところがそれを画像で使うと、シームレスに画像合成ができるのです。この「Poisson画像合成」の技術を授業で紹介したところ、学生が食いついてくれました。学生が本気になれば、素晴らしい研究ができます。没頭することで学生自身にも専門知識が身につき、成果が出せます。またそれ以上に達成感、そして自信がつくのだと思います。

■学生のモチベーションを高めるために、どんな工夫をされていますか?
私は消耗品のような卒業研究はしたくないと思っています。ノルマとして卒研を終え、なんとか合格するというものでは、忘れ去られてしまうし、消耗品みたいですよね。そうではなく、卒研の経験や成果が次のステップにつながるようなものにしたいと思っています。そのおかげなのか卒研のレベルは年々、上がってきています。また、学生には最初に先輩たちの研究を紹介するようにしています。すると「先輩たちの研究を引き継いで、発展させよう」と思ってくれる学生が少なくないのです。もちろん、そういう枠組みから出て、別のことをしたいという学生もいます。そのときは、その学生がどのくらい本気に考えているか、本当にそれがテーマとして成立するかをよく吟味するようにしています。
“カオスの縁(ふち)”という言葉を聞いたことはあるでしょうか。カオスとは混沌。みんなが勝手気ままに動いている世界です。もう一方にシステムがあります。きっちりルールが決められ、枠組みができている世界です。これら制度やシステムの縛りと、カオス的な自由奔放さのちょうど間を“カオスの縁”と呼ぶのです。実はカオスの世界でもシステムの世界でも、クリエイティブなものは生まれません。生命現象などは、常々、“カオスの縁”の領域で生まれています。ですから当研究室も大きな枠はありますが、それと同時に自由な発想や提案ができる“カオスの縁”になるよう心がけています。
それから授業では、先輩たちの活躍を話すようにもしています。例えば、先述の渡辺賢悟くんは、「ゆめいろのえのぐ」というフリーウェアのペイントツールを開発して、大きな評価を得ました。また、彼が開発したアニメ作成支援ソフト「After Effectsプラグイイン」は、テレビアニメや今夏公開された『エヴァンゲリヲン新劇場版:破』でも利用され、映画のスタッフロールに名前が載ったそうです。そういう話を聞くと学生たちは「すごい!」「自分たちもなれるかもしれない!」と思うのです。自分と関係のない雲の上にいる人ではなくて、自分たちの学部の先輩が活躍していることが、学生のモチベーションにつながっているんですよね。

■最後に今後の展望をお聞かせください。
画像処理やコンピュータビジョンの技術とコンテンツという接点のところで、面白いことをしていきたいと思っています。「面白い」というのがキーワードです。企業だと「役に立つ」というキーワードがあるだろうし、もちろん卒研や修士課程でも「役に立つ」という観点はありますが、せっかく大学で取り組むことなのですから「面白い」という観点を大事にしたいのです。あとは、学生の発想。我々が気づかないようなテーマを提案してくるので、それを大事にしながら研究を進めていきたいです。

[2009年7月取材]

■所属研究室・プロジェクト紹介

イメージメディア(PCサイト)
http://www.teu.ac.jp/info/lab/project/media_dep/1.html
イメージメディアプロジェクト(PCサイト)
http://www.teu.ac.jp/media/~miyaoka/imageproject_ex/


・次回は10月9日に配信予定です。

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