「大学の学びはこんなにおもしろい!」

「映像の基本を踏まえ、さらにその最前線に触れる学びを」
メディア学部 碓井広義 教授

■先生が授業や研究で取り組んでいることについて教えてください。
私の研究室では「次世代ブロードバンド」というタイトルを掲げ、大きく言えば“テレビはこれからどうなっていくのか”とか“テレビでどんなことができるのか”ということについて研究しています。また、私個人の研究では“テレビが何をどう伝えていくべきか”という研究も行っています。ここ数年、テレビ番組の捏造や誤報が、社会的な問題として取り上げられました。なぜそういうことが起きるのか、今後そういう問題が起きないようにするにはどうすべきかという、いわばテレビジャーナリズムについて考えているのです。また、メディアリテラシーも重要な研究テーマのひとつになっています。メディアリテラシーとは、メディアから流れてくる情報を鵜呑みにするのではなく、その背後にどんな意図があるのか、この情報は果たして本物だろうかと情報を批評的に捉え、自分なりにそれを読み解くことをいいます。さまざまなメディアによって、どんどん情報が受け取り手へと送られてくる今だからこそ、必要となる研究テーマだと思います。
こうした“情報を送り出す側”のことと、“情報を受け取る側”のことを学ぶのと同時に、もうひとつ、今度は自分たちが“情報の送り手”となる部分の学びとして映像制作も扱っています。例えば3年生を対象とした「デジタルシネマ演習」。デジタルシネマとは、フィルムを使った従来の映画とは異なり、デジタルで収録し、デジタルで上映する映画のことです。これを撮影するデジタルシネマカメラは、フィルムのカメラに比べると機動性が高く、編集作業や仕上げの作業も非常にしやすいという利点があります。「デジタルシネマ演習」では、このカメラの導入を準備している段階です。今はアイデアを出すところから始めて、企画を立て、シナリオを作成し、本学にある機材を使って映像作品を制作してもらっています。学生たちには、実際に映像をつくることで、自分たちの頭の中で考えていることをどう映像化すると、観る人に伝わるのかということを体験してもらいたいのです。

■デジタルシネマの登場など、映像を取り巻く環境は随分と変わってきているのですね。
今は、つくった映像作品をWebで発信するなど、ごく普通の視聴者、つまり市民が情報の送り手となれる時代ですからね。もっといえば、Webを使うことで放送局さえできてしまいます。もちろん一般的な放送は免許事業ですから、国が許可したところしか携わることはできません。しかし、これまでの放送の概念とは違う、まさに私たちが「次世代ブロードバンド」と呼んでいる、これからの広い意味での放送ということに関していえば、電波塔を立てて電波を流すという既存の放送局と同じことをしなくても放送できる時代が来たのです。そういう意味において、Webを使ってどんな情報が発信できるかを考えることもまた、研究テーマのひとつだといえます。
今、テレビ業界は社会的な不況などの影響で、広告収入を軸としたビジネスモデルが崩壊し、テレビ放送始まって以来の大きな変革の時期を迎えています。業界的には閉塞感があるように思われがちですが、逆にこれまでと違うものづくりやビジネスを探ることで、まだまだ面白いことができます。方法次第では、年齢やキャリアに関わらず、新しいものを生み出せるのです。学生にはその辺のことも学んでほしいですね。

■授業や研究を通して、どのような人材を育成したいとお考えですか?
今の学生は、カメラに触れたこともあれば、パソコンで映像を編集できるという人もたくさんいます。ただ、それが自己流だと、あるところまでは伸びても、そこから先へなかなか進めません。やはり映像の文法というのでしょうか、基本やルールをきちんと学ぶ必要があると思います。また、メディアは決して閉じているものではなく、社会とつながっているものです。そうした「メディアと社会」との関係、「メディアと人間」との関係を踏まえて、創造できる人になってもらいたいです。映像は、素晴らしい部分と恐ろしい部分の両面を持っています。映像は人間の脳を刺激し、喜怒哀楽といった人間の感情に直接作用する、他に類をみない創作物です。そのことを送り手は必ず自覚しながら制作していかなければなりません。そこのところもきちんと伝えていきたいですね。また、映像について学んだからといって映像のジャンルでしか活躍できないわけではありません。メディアのことを体感した経験があると、どんなジャンルの産業に入っても活躍の場はあると思います。メディアとの関わりを持たない産業はありません。なぜならメディアの役割とはコミュニケーションだからです。コミュニケーションはあらゆる産業、ビジネスの基本です。ですから私としては、どこへ行っても通用するような人材を育てていると自負しています。

■先生がテレビや映像の世界に携わることとなったきっかけとは?
私は大学卒業後、出版界に入り、その後、高校で国語の先生をしていました。基本的に私は活字人間なのです(笑)。それが映像の世界へやって来たというのは、本当にご縁としかいいようがないですね。テレビマンユニオンという日本初の番組制作会社が、2年に1度、ユニークな採用試験を行っていて、高校の先生だった私は「頭の体操」をするつもりで受験してみたのです。いわば“遊び”でした。ところが400倍の競争率にも関わらず合格してしまった(笑)。ならば、やってみようか、と。それ以来、プロデューサーとして20年以上も番組制作を行ってきました。途中からは大学で教えたり、研究するようになり、あらためて大学院で「メディア」について学び直しました。
確かに子どもの頃から映像は大好きでした。幼い頃からテレビと接してきて、中学生くらいからは映画も観るようになって、高校生になるとこれに本が加わります。今もメディア研究者、放送評論家としてテレビを観続けていますし、映画はビデオだけでなく週に1本は必ず映画館で観ます。本も書評の仕事のため、週5冊は読んでいますね。ですから、本やテレビや映画は生活の一部。好きなテレビや映画をずっと観続けてきたことは、私にとって貴重な財産なのです。ですから学生諸君には、自分が好きだとか面白いと思っているものを大事にしてほしいと思います。それが直接、仕事などに結びつかなくても、いつかどこかで、必ずそれが生かされる機会がやってくるはずです。
そうそう、今年度中に、久しぶりで「テレビ番組」を制作する予定です。放送の際には、ぜひご覧ください。そんな情報も、メディアについての考察を毎日書き込んでいる私のブログ(http://blog.goo.ne.jp/kapalua227)に掲載していきますので、こちらもチェックしてみてください。

■では最後に今後の展望をお聞かせください。
「デジタルシネマ演習」では、近々デジタルシネマカメラを導入しようと考えています。これまでのデジタルシネマカメラはものすごく高価で、大学で導入するなんてとても難しいことでした。まさにハリウッドのようなスケールのところでないと使えないものだったのです。ところが最近、アメリカで「RED ONE」という比較的、手に入れやすいデジタルシネマカメラが登場しました。今、日本でもCMの世界で導入が始まっています。日本にはまだデジタルシネマを上映できる映画館は少ないですが、いずれはそういうものも増えていくでしょう。アメリカでは、もう広がっていますからね。ですからできるだけ早く、学生たちがデジタルシネマカメラを使って撮影したり、撮影したものを編集したりできる体制をつくろうと準備しています。実際にデジタルシネマカメラに触れ、体験したことは、学生にとってすごく大きい経験になるはずです。映像の基本を学ぶことはもちろん、それを踏まえながらも、映像の最前線に触れていくという学びの流れをつくっていければと思っています。

[2009年5月取材]

■次世代ブロードバンド研究室
http://www.starman.biz/broadnext
■碓井広義ブログ
http://blog.goo.ne.jp/kapalua227

・次回は7月10日に配信予定です。

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